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VP RECORDS NEWS | 2012 OCTOBER
10/29 update
01.ROMAIN VIRGO IN JAPAN
THE SYSTEM / ROMAIN VIRGO
VP1936 / IMPORTS / IN STORES
01. THE SYSTEM
02. MINIMUM WAGE
03. ANOTHER DAY ANOTHER DOLLAR
04. FOOD FI THE PLATE
05. DEM A LOWARD
06. I KNOW BETTER
07. MAMA'S SONG
08. NOT TODAY
09. I AM RICH IN LOV
10. RAY OF SUNSHINE
11. FANTASIZE
12. FIRED UP INSIDE
13. DON'T YOU REMEMBER
14. BROKEN HEART feat. BUSY SIGNAL
15. PRESS ON
今回のROMAIN VIRGOの初来日を首謀したMIGHTY CROWNのSAMI-Tが、来日前に「歌がヤバイから」「『レゲエ』だから」と幾つか呼ぶことを決断した理由を話してくれましたけど、その中には「良い奴だから」もありました。ただ、SAMI-Tの「良い奴」の基準も分からず、コレまでに自分の中で「良い奴」と思っていたジャマイカのアーティストが実際には「うわっ・・」だったり、「随分と歌っているコトのイメージとは違うもんだ」もあったり、またその逆もあったりで、SAMI-Tの色々な呼ぶ理由の中で他の理由には素直に同意出来ても、その「良い奴だから」だけには「さーて、どうだろう?」と思っていました。
ただ、電話では話したことありましたけど、今回に初めて直接対面し、数日間にそれなりの時間を共にしたROMAIN VIRGOはホントに「良い奴」でした。ショーでの熱演は観て頂いた通りですが、それ以外の全ての場面でも常に自分の役割と責任を理解して、それが不眠と移動に疲れている時であったりしても、求めに応じて笑顔と冗談を絶やさずに頑張り抜いていく様子には、感銘と言うか、感動と言うか、まさにプロフェッショナルでした。違う言い方をすれば、ROMAIN VIRGOほど手が掛からないアーティストはいませんでした。で、そうした部類には、FREDDIE McGREGORやT.O.K.もいますが、彼らのような経験もしていないROMAIN VIRGOの22才という若さを思えば、「Riddim Online」の取材に立ち合ったOVERHEARTの石井社長が思わず「君は誰から教わったの?」と突っ込んだの同様に、自分も「うーむ、君はチト出来過ぎだろ。立派すぎるだろ」と思ったぐらいです。その素直さみたいなものが、汚れた自分からすると眩し過ぎたのもあります。
で、シンガーとしてのバイオ等はこれまでにも紹介してきてますが(『THE
SYSTEM』リリース時のインタヴューはこちらで)、それを改めて本人に確認をするフリもしつつ、この「出来過ぎ君」はいかにして出来たか色々と話してみました。
●セント・アンの出身なんだよね?
うん、ジャマイカの田舎町だね。貧しい場所で自分の家庭も貧しかったんだ。子供の時も行く場所もないし、母親が好んで聴いていたALTON ELLIS、DENNIS BROWN等の往年のロックステディやレゲエ、OTIS REDDINGやPARCY SLEDGE等のソウルを一緒に聴いたりするのが楽しみだったね。週末とかに自宅でそうした母親が好きな歌を歌ってカセット・テープで録音して、母親や家族と聴くことが唯一の楽しみだった。貧しいながらも育ててくれている母親を喜ばせてあげられるのも子供ながらに嬉しかったし、自分の歌を母親に誉めてもらえるのも嬉しかったんだ。
●自分から意識的に聴いたりしてた音楽はなかったの?
母親から「まだ幼いから行ってはいけない」と言われていたから、幼い時には行けなかったけど、その頃から地元のVIKINGSやBLACK SPIDERのサウンドがプレーするBERES HAMMOND、SANCHEZやLUCIANOの曲に家の中で耳を傾けて聴いていたね。歌ものが好きだった。ポジティヴなものがね。聴いていて勇気を与えてくれる曲が好きだった。
●それで自分で歌うようになったの?
母親や家族と共に教会へと通っていて、教会のクワイア(聖歌隊)に参加するようになったんだ。ある日に誰もいないと思っていた教会で一人で歌っていたら、それを見ていた人がいて、「君は歌が上手い」と言われたことが初めて自分が歌うことを意識した瞬間だったね。その後に、地元の高校に進学して参加した高校のクワイアでも「上手い」と言われて、クアイアのリードを歌うシンガーに任命されたんだ。嬉しかったね。そして、その高校で参加した、ジャマイカの高校の全国大会で2位を獲得したんだよ。それが大きかったね。ほら、田舎でいくら「上手い」とか言われても、全国レベルで考えると全然自信とかは持てなかったけど、その2位になった時に初めて自信も持てたし、本気で「プロになりたい」とも思うようになったんだよね。そうした時に周りから『RISING STAR』(ジャマイカのコンテスト番組/ジャマイカ版『AMERICAN IDOL』)に参加することを勧められて出ることにしたんだ。一回目は失敗したけど、そこで学んだコトを翌年にブツけて優勝することが出来たんだ。最年少の優勝者になれたコトも嬉しかったけど、それよりも前年に歌って失敗した曲をもう一度歌って優勝できたコトが自信にもなったね。頑張れば報われるってね。
●それをきっかけにすぐにプロになったと?
すぐではないね。プロになるきっかけをくれたのは〈PENTHOUSE〉のDONOVAN GERMAIN。『RISING STAR』で優勝したことで出会えたんだけど、一流のプロデューサーと会うのもスタジオに入るのは初めてで、プロとして活動できるように色々と指導してもらったりしたんだ。最初に言われたのは『RISING STAR』のコトを忘れろ、だった。他人の曲をカヴァーして勝ち上がってきたわけだったけど、自分としての曲や歌い方を獲得しないとダメだということを言われた。GERMAINはそうしたコトだけではなく、スタジオ以外での立ち振る舞いや、人との接し方、生活に関しても指導してくれた。あと、何よりも音楽に集中することの大切さを言われたし、求められた。GERMAINはBUJU BANTONやASSASSINや色々なスターが育てているけど、自分とにとってもプロフェッショナルなアーティストとしての基本を教えてくれる特別な存在なんだ。
●教えてもらったことを教えてくれる?
うーん、自分で曲を作ることは出来る、でも、それを一人で全部レコーディングは出来ない、ミュージシャンやエンジニアの存在は大切だし、彼らの意見も聞くことで曲はより良くなる場合も多い、曲が出来ても、一人では届けられない、ショーの現場を用意してくれる人、ラジオやサウンドでプレーしてくれる人がいないと届けられないし、曲をリリースしてくれるレーベルが無ければ出せないし、それを売ってくれる店が無いと届けられない、また、そうした人達からの意見も自分の曲を作る上では参考にもなる・・。最終的には届ける相手はファンだけど、そうした人達を抜きにして作れないし、届けらないし、そうやって自分のために協力してくれる人達には自分も協力しないとダメだと思うんだ。その人達のためではなく、自分のためにもなることだから・・、
●そうしたコトをGERMAINから学んだと? 今回に会って、そのショーだけではないプロフェッショナルな言動に驚かされたりも、感銘も受けているんだけど、22才にしては出来過ぎているようにも思ったんだけど、それはGERMAINの影響も大きいんだね。
ホントに22才だよ(笑)。まぁ、そのままそう言われたわけではないけど、GERMAINにはそうしたプロフェッショナルとしての基本の考え方は学んだし、そこから自分で意識するようになった感じなんだ。言われたままではないし、勿論、GERMAIN以外からも色々と教えてもらっているし、自分で色々と見て学んできているのものなんだ。常に学んでいるし、学ぶことが自分を成長させるとも思うし。そうだね、母親も、教会や高校時代の人達、『RISING STAR』も・・。そうした人達との出会いや経験の積み重ねだとも言えるね。あと、今は忙しく通えていないけど学生でもあるんだ。音楽やエンターテイメントを専攻していて、そこでヴォイス・トレーニングの仕方や歌い方も教えてもらっている。ショーの時に前に身体を屈めて歌うことを指摘されたけど、それもそこで学んだことを自分なりに応用しているんだ。うん、ちゃんと復学して卒業もしたいんだけども。うん、学び方は色々だけど、学ぶコトだね、自分はまだ若いし、知らないコトも多いし、あと、大切なのはずっと学ぶことなんだろうね、きっと。こうして現在も日本で学んでいるよ、時間通りに進むコト、礼儀正しく接するコト、そうした素晴らしさとかね。うん、ジャマイカにはあまりないね(笑)。
●とても謙虚だし、クレバーだし、言っていることも正論なんだけど、なんて言うかな、そうした素直な部分はどこからきているんだろう?
(笑)。育った環境、育ててくれた人達かな、あと音楽で歌われるリリックかな。
●音楽ね。好きな音楽と言うか、アーティストにはLUCIANOやSIZZLAやラスタな人達も多いよね。髪を伸ばした時にはラスタになるかなって思ったよ。
(笑)。よく言われたよ。特に女の子にね。みんな反対していたみたいだけど、ただ気分で伸ばしてみているだけだよ。スタイルだよ(笑)。自分はラスタではないけどね。えっ? うん、今も教会に行くよ、そんなに頻繁には行けないけど。ああ、言いたいコトが分かったよ、よく誤解されるけど、ジャマイカにおいてラスタは確かに宗教であったりするし、教会に行くことも宗教的なコトなんだけど、教会に行ったり、聖歌を歌うことはそれ以上に日常の普通のカルチャーなんだ。クリスチャン云々と言う以前にカルチャーなんだ。日本人が箸で食事をするのと同じように深く考えない程に当たり前のコトなんだよ、少なくとも自分の育った地域ではね。そうやって育てられてたよ。で、よくラスタとクリスチャンを分けるけど、ラスタとクリチャンが言うコトや、ラスタのアーティストとゴスペル・レゲエのアーティストが歌うコトも共通点が多いんだ。LUCIANOとかもそうだけど、どちらもポジティヴなメッセージを伝えていたり、同じ言葉を使っていたりして、自分はどちらでもそれが共感できるならそれでいいんだ。勿論、ラスタにも色々といるから、全部そうとは言えないし、中には見た目はともかく「ホントにラスタなの?」みたいな人もいるから何とも言えないけど、自分だけのコトとして言わせてもらうと、ポジティヴな内容であれば分け隔てなく聴けるし、何よりも良い音楽かどうかが一番の関心事なんだ。それはレゲエ以外の音楽に対してもだけどね。
●そうしたポジティヴな音楽に影響を受けてきました、と?
そうだね、それは大きいし、自分もそういう音楽を伝える存在になりたいとも思うし、そのためには自分がどうあるべきかも分かってくるよね。
●あー、それはそうと、今回は三人で来日しているけど、いつも一緒の人達なの? 二人とも年上だよね。
マネージャーはVIKINGSの仲間だ。レーベルとしても拠点だけど、地元のサウンドだったんだ。そう、自分が子供の時に家から聴いていたサウンドだね(笑)。地元が同じということでヴァイブスが近いのもあるし、これまでの自分をずっと見てきてくれている安心感もあるし、それゆえに変なハイプに巻き込まれないようにも思うし、何よりも音楽に対する感性や愛情が一緒なんだよ、猛烈にね。僕達は「音楽」の人達なんだ。ハイプとかは興味無いんだ。あと、一緒に来ているエンジニアは元々JUNIOR REIDやBLACK SCORPIOのスタジオで働いていた人で、LUCIANOの『SERVE JAH』のアルバムとかも担当していたりして、経験も豊かだし、知識も多いので色々と教えてもらったり、指摘してもらうことも多いんだ。うん、二人とも年上だよ、自分はいつもどこでも年下さ。
●ハイプ・・、うーん、同世代にはTOMMY LEEとかをはじめ、ROMAINとは全く違ったタイプのアーティストもいるよね?
(笑)・・。うーん、まぁ、色々といるよね・・。色々なファンもいるし・・。ただ、自分が言えるコトは自分は自分のスタイルを貫くしか無いし、みんなそれぞれに頑張ればシーン全体は良くなるし、ジャマイカの音楽も向上するとは思うよ。
●今回の日本のメディアにインタヴューでも「影響されたアーティスト」と質問された時に、とても22才とは思えないぐらいヴェテランばかりを挙げていたけど、共感できる同世代のアーティストとかはいるの?
いっぱいいるよ。TARRUS RILEY、ETANA、CHRISTOPHER MARTIN、BUSY SIGNAL、ESCO LEVI・・、とにかく「音楽」に本気で取り組んでいる人達には全員そう感じているよ。言葉は分からないけど、CHOZEN LEEもそんなヴァイブスを感じるし、世界中にはもっとたくさんいると思うよ。
●そうした同世代には負けない、と?
良い意味での競争はあるけど、勝ち負けではないかな。いや、確かに言った通りに、周りに学ばせてもらっているし、色々と影響も受けているし、周りの意見も大切にしているよ。でも、それとは別に自分の才能を信じてもいる。自分のオリジナリティに対してのこだわりは強いし、ALTON ELLISや色々な人達と比べられることは光栄だけど、自分には自分にしかないオリジナリティもスタイルもあると信じている。それを世界に届けていきたいという気持ちも強いし、それを尊敬するアーティスト達みたいに長く歌い続けていける存在になりたいとも思っている。今回の日本も初めてだけど、まだ行ったことのない国も多くて、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、ヨーロッパも何度か行っているけど、UKに行くのは二週間後に行くのが初めてになるし、行ったことがないところがたくさんあるんだ。そうしたところに全部行ってみたいんだ。BOB MARLEYじゃないけど、自分も世界にジャマイカのレゲエを届けていく一人になりたいんだ。うん、自分が聴いて育ってきたようなレゲエを自分もずっと歌っていきたいんだ。
●それが現在の目標なんだね
うん。あと、自分も貧しい環境で育って、厳しいコトもあったりもしたけど、そうした環境から出てきた自分の活躍が同じような境遇にいる人達への励みや希望になれるといいとも思っている。貧困はジャマイカに限らず世界中に存在しているし、戦争や紛争や、日本でも地震とか自然災害があったりしたけど、そうした厳しい境遇の人達もたくさん世界中にはいると思うんだ。そうした人達に届けたいとも思うし、それゆえに世界中で通用するメッセージを持った曲を作りたいとも思う。BOB MARLEYのように何年経ってもそれがリアルに届いて、人々を励ますような曲を残したいとも思う。小さな国のジャマイカ出身で、レゲエのシンガーだけど、それでも出来ることはあると思うし、レゲエは世界中に通用する音楽だとも思うし、それゆえにレゲエにこだわりたいとも思うんだ。
うん、まだ始まったところだね(笑)・・。うーん、少し不思議な気分だけどね・・。何年か前に自分が日本に行って歌を歌うなんて思ってもみなかったよ。ジャマイカから海外に行けることもね。それが現実にこうして起きているわけで・・、うん、ココから何があるか分からないけど、その分ワクワクもしているね。自分でも楽しみなんだよ。
TEXT BY: 八幡浩司(24x7 RECORDS, INC.)
▼ RIDDIM ONLINE / 『ROMAIN VIRGO』meets CHAQURA:
http://www.riddimonline.com/archives/3990
▼ EXTRACLASSIC / ROMAIN VIRGO:
5 FAVORITE SONGS OF MOST INFLUENCED JAMAICAN SINGERS
http://extraclassic.net/blog/news/2012/14970
▼ MIGHTY CROWN TV / ROMAIN VIRGO INTERVIEW:
http://youtu.be/nyKY8rSSoJo