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　えー、これまで続けて来た『最近の出来事』は、日々の「DAILY NEWS」もあって、内容が重複したり、あまりにも意味の無いコトが多過ぎましたので、一度止めることにしました。

　で、今回からは、もう少しリリースとかに連動した内容にしようか、と。タイトルは『JAH IS MY NAVIGATOR』。なんか格好付けてみました。どーか、ヨロシクです。

　第一回目となる今回は、LUCIANOの最新作『JAH IS MY NAVIGATOR』がリリースとなるということで、LUCIANOについて書いてみましょ。

　LUCIANOですけど、94年の〈BIG SHIP〉からのデビュー盤『SHAKE IT UP TONIGHT』から、ずっと現在までずっと愛聴しています。多作ですし、その全ての作品を聴いているわけではありませんけど、それでもその魅力を理解するには十分な量を聴いていると思います。個人的には「作品によって優劣があるのは当然だけど、それでも当たり外れが少ない、常に高い水準を維持した信頼出来るアーティスト」って印象を持ってます。まっ、細かい理由とかは置いておいて、単純にその歌声と、泣きメロ／哀愁の組み合わせがツボで、それに惹かれている、っていうのもあります。とにかく、かなり好きなシンガーです。

　で、惹かれたきっかけとなったのが『SHAKE IT UP TONIGHT』なんですけど、この作品がリリースされた時は、以前の会社に勤務していました。そして、その会社を通じてFREDDIE McGREGORの〈BIG SHIP〉と契約をして、色々と作品をリリースしていました。その契約では「〈BIG SHIP〉の作品は全て日本先行発売出来る」となっていましたけど、FREDDIEからは何の連絡も無いままに、この作品がイギリスのJET STARからリリースされて、「あら〜」と思ったのを覚えています。

　で、そのJET STAR盤ですけど、アルバムのジャケットがイマイチでした。LUCIANOは赤いジャケットを着て、黒いマフィア帽をかぶって、ニヤっと笑っています。ドレッドは帽子に隠れてたのか、見えなくて、予備知識が無い人が見ると、一体何者でどんな音楽を演っているのかサッパリ分からない感じです。「LUCIANO」というレゲエ・アーティストらしからぬアーティスト名と、その衣装もあって、なんかインチキなイタリア系のシンガーみたいに見えなくもないです。パスタ喰いながら、カンツォーネとか歌っていても変ではなさそうです。

　FREDDIEとの契約が無ければ、もしかしたらジャケットを見て「だっせぇー！」と笑い飛ばしたかもしれません。ただ、自分が担当する作品だと思うと、それを何としてでも好意的に見ようと努力するもので、「コレはコレで狙いがあるんだろう。それを読み取るんだ」と自分に無理矢理言い聞かせたりしました。ただ、どうしても「狙い」を読み取ることが出来ず、FREDDIEに「このジャケットの写真の意味を教えて欲しい」と聞きました。もしかしたら「読み取れない？　レゲエを聴いてたら分かるだろうが！」と叱られるかもしれないと思ったのですけど、勇気を出して聞くことにしました。その頃は未だFREDDIEとの付き合いも始まったばかりで、FREDDIEの性格とかをちゃんと理解出来ていなかったと思います。

　で、ビビって聞いてみたら、「ああ、アレね。アレはイタリアン・レストランで撮ったんだよ。名前もイタリアっぼいから、そんな雰囲気で衣装を用意して撮ったんだよ。良いだろ？　わっはは」と笑われて、どこか安堵したのと、少し嫌な気持ちみたいなのになりました。十分、読み取っていたんです。でも、それをFREDDIEの言う通りに「良いだろ？」とは思えませんでした。「そう思えない自分に修行が足らないんだ」とも思いかけましたけど、「いや、やっぱりあれは無いよ」と自分で思い直しました。その頃には、既にLUCIANOは〈XTERMINATOR〉からヒットを連発して、「ラスタ・ムーヴメントの新星」と扱われていたので、余計にそう思い直しました。で、勇気を出して、FREDDIEに「日本の国内盤を出す時は、ジャケットを変えても良いですか？」と聞いたら、「あー、全然良いよー、わっはは」と、全く気にしていなくて、なんか力が抜けました。FREDDIEは自分の質問よりも、ルーム・サービスで頼んだ好物のシーフード・ドリアに夢中でした。その後、国内盤は全く別のイメージのジャケットでリリースし直しました。

　日本盤リリースした直後に来日したLUCIANOに日本盤を渡しました。竹で出来た帽子と、網シャツで裸足で登場したLUCIANOは、受け取りながら「Bless Bless」と嬉しそうでした。日本盤はラスタっぽいイメージで作っていたので、気に入ってくれるとは思ってましたので、「やっぱりこっちだよね」と思ったりしました。記念にサインしてくれたんですけど、その時に「JET STAR盤のジャケットはイメージ違いますけど、アレはどう思ってます？」と聞いたら、「あー、アレね。アレはイタリア・レストランで〜」とFREDDIEと同じ説明をしてくれた後に「アレも良いだろ？　ナイスだ」と嬉しそうで、さらに細かく着た衣装のディテールとかを説明してくれました。「赤いジャケットに〜」って感じで。で、竹の帽子と網シャツと裸足の人に、「服好きなんですね？」って聞いて、「ああ、大好きさ」と言われました。

　それ以来でしょうか、LUCIANOがリリースしたり、ショーを見る時は、いつもジャケットやステージで何を着ているのか、気になりました。元々、レゲエ・アーティストの衣装をチェックするのは好きなのですけど、このLUCIANOほど実は特別な人は居ないことに次第に気付いていきます。作品と同様に、「当たり外れが少ない」と言うか、ある意味全部こちらの期待を良い意味で裏切る「当たり」だらけの人でした。

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改めて『JAH IS MY NAVIGATOR』ヨロシクです。

　分かり易いラスタものも多いのですけど、時として迷彩の兵士みたいなのとか、アフリカの王様みたいなのかとか、ステージ衣装の域を超えたコスプレみたいなものも多くて、呆気に取られることもしばしば。多分全部オリジナルで作っていると思います。で、そのセンスに痺れて、なんか憧れるんです。最近のブランドものとか、最先端の流行を取り入れた若いアーティストとかを見ると、逆に「オリジナリティが無いね〜。NE-YOとかそういうのをみたいじゃんよ」と物足りない限り。「LUCIANOを見習えよ、アレだよ、アレ」と、苦言を呈したくなる感じ。まっ、LUCIANO以外では、CAPLETONとかCOCOA TEAを見習うのも良いでしょう。とにかく、レゲエと言うか、ジャマイカンならではのセンスでのお洒落感覚が薄いアーティストはなんか物足りないです。彼らはそれを着ることを許された立場だし、伝統芸みたいなものですから是非受け継いでもらいたいところ。日本人がやると痛々しく見える場合もあるので注意が必要だと思います。

　で、そのLUCIANOの衣装の中で、ある意味究極だったのが、昨年の夏の来日公演で着ていたもの。会った場所は真夏の野外で、もちろん灼熱です。にも関わらず、マントを着て、全身黒とラスタ・カラー。足下はブーツ。唯一夏らしいと言うか、野外っぽい対策はサングラス。その格好で楽屋をウロウロ。なんかダース・ベイダーみたいでしたけど、汗も特にかかずに、アチコチで談笑を繰り返して、「わっははははははは」と大声で笑いまくっている様子が、格好良いったら無かったです。彼にしか出来ないその姿とオリジナリティに、男としての器のデカさみたいなのを感じました。改めて、そのセンスにクラクラさせられました。

　さて、『JAH IS MY NAVIGATOR』ですけど、LUCIANOの最高傑作と言える内容です。ただ、ジャケットはどうでしょう。LUCIANOの世界と魅力を小さな紙の中で伝え切るのは難しいですし、ジャケットのデザインに「正解」は無いので、評価はそれぞれでしょう。ただ、『SHAKE IT UP TONIGHT』以来、LUCIANOを見ている者として、「もっと見せ方はあったかも。こんなに良い作品だし、LUCIANOはどのレーベルでもいつもジャケットがイマイチだし、ココはもっと考えて欲しかったかも」と思うのは事実。

　で、考えました。「あっ、それだったら、ステッカーを作ろう。LUCIANOのセンスと格好良さを分かってもらえるステッカーを購入者特典として作ろう」と。すぐに作りました。昨年の夏の写真を使ったものです。めちゃめちゃ格好良いと思ってますが、どうでしょう？　TOWER RECORDSとかHMVとかで先着でプレゼントします。是非、ヨロシクです。

　そんな感じ。ではでは。

八幡浩司（24×7 RECORDS., INC.）