GYPTIAN

GYPTIAN / HOLD YOU
HOLD YOU / GYPTIAN
VP RECORDS / VP1867 / IMPORTS

01. TO BE HELD
02. BEAUTIFUL LADY
03. CALL GYPTIAN
04. ALL IN YOU
05. HOLD YOU
06. NAH LET GO
07. TEASE ME (HAFFI EASY)
08. L.U.= V.E.
09. RENDEZVOUS
10. SO MUCH IN LOVE
11. NA NA NA (A LOVE SONG)
12. DRIVE ME CRAZY
13. WHERE YOU BELONG
14. LEAVE US ALONE
15. SELAH


「Hold You」PVはこちらから

 「今、若い世代でもっともロマンティックな声を持つシンガー!」

 7月23日、世界最大のレゲエ・フェス〈Sumfest〉のインターナショナル・ナイトでジプシャンを紹介する際に、司会を務めたIrie FMのDJが口にした言葉だ。

 少し鼻にかかった声で「Mama」「Beautiful Lady」「I Can Feel Your Pain」などのヒットを放ち、レゲエ・フィールドでは安定した人気を保って来たところで、今年に入って北米、ヨーロッパで「Hold You」が大当たり。機を逃さず、同名タイトルのサード・アルバムをドロップし、プロモ・ツアーを精力的に展開している真っ最中だ。

 「今回は自分がいろいろできるところを見せたかったんだ」とジプシャン。その言葉通り、サード・アルバムには、トレード・マークとも言える甘いラヴ・ソングから、テナー・ソウ「Golden Hen」を敷いた(というか、ほとんど替え歌の)「Leave Us Alone」やシング・ジェイを聴かせる「Call Gyptian」まで、いままでとは違った表情をも見せている。 「俺にとって、音楽に限界はない。いろんなやり方で音楽を作れるし、音楽を通してできることもたくさんあるしね。俺は鳥のように新しい土地を探すのが好きなんだ。どんな経験が待っているか分からないからね。音楽へのアプローチも同じことだよ」

 ジプシャン=渡り鳥説。なかなか、詩的だ。前作に引き続き、ジャマイカ出身マイアミ在住のプロデューサー、ジョン・FXとジプシャンが中心になってアルバム全体を仕上げたそう。 「コンピュータも使っているけれど、本物の楽器も使っているよ。俺はミュージシャンと一緒に仕事をするのが好きなんだ。今回はFXがたくさん演奏してくれた。彼は何でも出来るからね」

 その、ジョン・FXとも話す機会があった。「ジプシャンはいろんなことに対してオープン・マインドなんだ。どんなことでもためらわずにチャレンジするタイプだよ」と言っていた。

 音楽に対する態度はオープン・マインドだが、ジプシャンはジャマイカとレゲエに対するプライドもしっかり持っており、「スパイス代わりにR&B調の曲も入れたよ」と話す一方で、「レゲエとR&Bを構成している要素はほとんど同じで、R&Bでやっていることでレゲエにないものは全くないと俺は思っている。ラップだってもともとはレゲエのトースティングから始まったわけだし」とも。

 ときどき語気の強い言葉を吐くものの、本人は物腰が柔らかく、鼻歌が似合うタイプ。
「俺は人に思われているかあまり気にしないんだよね」と、自己分析。
「俺たちが受け取るエネルギーには二通りしかない。ポジティヴなエネルギーとネガティヴなエネルギーだ。人が俺をどう思うかも、その二通りしかないから、いちいち気にしていられないよ。俺のことをよく思ってくれるんなら、ありがとうって気になるし、悪く思うんだったらそれをどうこうする気はない。俺は歌うのが好きで、それさえ出来ればいい。趣味も歌なんだよね。ほかにない」

 柔和な彼に対して、悪口を言う人がいるのは信じがたいが、人気が急上昇してから、あれこれ言われる立場にいるのかも知れない。ジプシャンは強烈なカリスマ性を持つタイプではない。だが、悪口も「それはそれ」と流せる大人なところや、大きな成功に浮かれずに着々とプロモ・ツアーをこなせる勤勉さが、ダンスホール・アーティストとしてネクスト・レベルに行けた理由のひとつかも、と彼の発言を聞き返して思った。

 「海外のアーティストとの共演の話はいろいろ来ているけれど、本決まりになっていないから、まだ名前は出せない」との気になるコメントもあった。

 現在、ニッキ・ミナージが参加した「Hold You」のリミックスがHot97以下アーバン系のラジオでガンガンかかっていて、秋まで勢いが続きそうな気配。以前からのファンとして、アルバムをサポートしつつ、ジプシャンがどこまで飛躍するか見届けたいところだ。


interview & text by 池城美菜子
http://reggaeblog.dtiblog.com/


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